想いは、事前に出し切ります。

昨年、11月には、全服連理事長はじめ先生方の、国への働きかけは、痛いほど分かりました。また、東京の紳士服業界環境も同じく、痛いほど歯痒い気持ちで説明会が終了しました。紳士服業界が一丸となり後継者育成を考えない限り、「日本の紳士注文服業界の将来は無い」と、私の思い込みから半年が過ぎました。
 私は、大阪洋服同志会会長の立場を活かし、あらゆる新年懇親会で「後継者育成」「技能検定問題」「販売と生産の関係」「業界への感謝と、将来への希望」、議論の場としました。
 そして、大阪府職業能力開発協会・大阪府技能士会連合会・中央職業能力開発協会厚労省職業能力開発局評価課へ、問い合わせもしました。職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させる事を促進し、もって、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする「職業能力推進法」も勉強しました。有識者による「技能検定職種の統廃合等に関する検討会」(議事録)も読みました。「技能検定試験・平成23年度の実施状況について」には、23年度の合格者数は31万5.108人、前年度に比べ7.4%の増加でした。現在の職種は、129職種が実施され、昭和32年度の制度開始以来、平成23年度までに約490万人が資格取得しています。平成23年度受験者申請が多い上位職種には、・「ファイナンシャルプランニング」 約51.3万人 ・「機械保全」 約3.2万人 ・「機械加工」 約2.1万人 ・「金融窓口サービス」 約2.0万人 ・「知的財産管理」 約2.0万人と、公開されています。
公開資料を基に、厚労省職業能力開発局評価課へお電話しました。「紳士注文服製造職種のトータル技能士は、いったい何人いるのですか?」「23年一試験申請者のファイナンシャルプライニング100分の1の5000人は、居るのですか?」「頭脳で覚えるサービス業と、身体に叩きこむ手仕事職種を、同じテーブル(人数枠)で、統廃合を判断するのは矛盾があります」「職業の安定及び労働者の地位向上が明記されている能力開発推進法には、人数枠で統廃合がされると、改正されているのですか」「平成19年の規正改革で経費に無駄を無くせと職種の統廃合を行い、7年が過ぎました。職種統廃合の結果検証の時期では、ないのでしょうか」「統廃合のメリット・デメリット、そして、どれだけの経費削減が出来たのか、数字に表して下さい」「時代に求められる職種だけが、日本を支えているのではありません」「過去・現在・未来へと、繋げる職種もあるのです」「多くの職種を守り育てるのは、決して税金の無駄使いではありません」、私が、問い合わせた内容です。
 技能検定(国家資格)についても、勉強しました。「職業独占資格」特定の業務に際して、特定の資格を取得しているものだけが従事でき、資格がなければ、その業務を行う事が禁止されている資格。代表的な資格に公認会計士・弁護士・税理士・医師などです。「名称独占資格」資格取得以外の者がその資格の呼称を利用することが法令で禁止されている資格です。業務独占資格と違って独占するのは“名称のみ”になりますので、資格を持っていなくても有資格者と同様の行為を行う事は出来ます。介護福祉士・栄養士や、技能士が含まれます。「必置資格」特定の事業を行う場合に、その事業所などに決められた資格保持者を必ず置かなければならない。保育士・旅行業務取扱管理者・宅地建物取引主任者などがあります。
 私は、我々が取得している「技能士」の名称独占型の中途半端な国家資格を、国は、何故つくったのだろうと、考えました。医師・弁護士のように「職業独占」資格がなければ、その業務を行う事が禁止されている資格、どの職種にも一つの目的として国家資格が存在するならば・・・と考えました。しかし、全ての職種に国家資格の取得が義務付けられたら・・・と、考えると、新たに生じる問題も見えてきます。
名称独占資格」、国は条件範囲を名称だけにして、各職種業界と有資格者に、資格条件を任せる方法をとったのではないかと思いました。試験内容難度を上げ、取得価値を高めるも良し、業界内の有資格者の優遇処置をとるも良し、消費者への信用を得る手段として、国家資格の活かし方は、各職種業界に任されていると思うのです。個人としても、向上心や誇りを持って仕事に励む事は、有識者ならではの、アイディンティティ―だと思うのです。
 「技能士を取得しても、意味を成さない」、資格があっても豊かにならないと、職人仲間が、よく口にする言葉です。「資格より、実力だ!」、資格を振りかざすより、良い仕事とは、商工共に聞こえる言葉です。
国家資格は、肩書きにすぎない。技能士名称は、単なる無駄の長物で不必要な物なのでしょうか。もう古い過去の資格なのでしょうか。
 若い人に「何故、技能検定試験に挑戦するのですか?」と問えば、「検定試験があるから」「肩書きになるから」と答えるでしょう。私も、20歳代に技能検定に挑戦したのは、「資格があっても、邪魔にはならないよ」と、勧めて頂きました。国家資格に、実用的な意味付けより、むしろ、有資格者としての重みに意味があったと思うのです。職種業界として個人の想いとして、技能検定(国家資格)の意味付けは、十分叶っていたと考えます。これまでの反省を基に、将来を担う若い世代が、技能検定を消費者の信用の証として、商工共に、豊かになる手段として、どのように活かす事が出来るかに、懸かっていると思います。
この役目は、技能検定(国家資格)が、十分に成せる業だと考えます。
しかし、私の主張が、国の方向性を変更するのは不可能だと、調べれば調べるほどに、ひしひしと重く感じています。
全服連の先生方は、紳士注文服業界の現状をご承知の上で、厚労省への働きかけを頂いたと思います。職種統廃合の条件を突きつけられるなら、諦めざるを得ません。
しかし、私は、技能検定の重要性から、黙って諦める事は出来ません。
紳士注文服職種の廃止は、現在決定的ですが、廃止回避の為に出来るであろう事柄は、次の4点です。
1、 統廃合のスケジュールである、最終試験実施ではなく、技能検定存続の条件である、受験申請者40人(3年ごとの実施)の条件クリアーを、全国の紳士注文服業界の皆さんに呼びかけます。一級試験だけでなく、二級試験の参加を、広く呼びかけます。
2、 技能検定有資格者の意義を明確化し、将来ある若い技術者に広く参加呼びかけと、業界の奨励推進を呼びかけます。
3、 厚労省が行っている職種統廃合の矛盾を、他業種の皆さんに呼びかけます。
4、 他業種の声を集め、少人数職種の統廃合が、日本「ものづくり」文化の消滅させる事を、世論に訴えます。時代に合った「サービス業」と、過去・現在・未来をつなぐ「ものづくり・人づくり」の職種を区別し、人数枠判断の改めを、国へ働きかけます。
 現在、国の方針も世論の方向性も、数字評価の世界です。現場の声が通じる世界ではありません。しかし、11月から半年間、技能検定問題を、悩み苦しみ現場の声を伝えました。その中で、大きな壁を感じる以上に、「まずは、紳士注文服業界の方針が一つになりなさい」「それから、協力も考えましょう!」と、期待を持って応援して頂く声があった事は、事実です。
全服連の先生方はじめ、紳士注文服業界の皆さんが、心一つに強い働きかけを頂けるなら、他業種への働き方も出来ます。他業種のご協力を得る事も、出来ます。
紳士注文服業界が、後継者育成の想いと技能検定の重要性は、一体です。首の皮一枚でも、存続の可能性があるのなら、後継者の為技能検定の存続に、諸先生諸先輩のお知恵とお力をお貸しください。
大阪洋服同志会会長・大阪技能士会会員  杉山一郎




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