あと十年

「締めろ」「叩け」「殺せ」「いじめなさい」「寝かしなさい」「吊るしとけ」「・・・」

一般の人に聞かれると、「事件」です。

洋服職人用語で、先輩が後輩に仕事を教えるときに、使う言葉です。

何十年も昔の生地は、羅紗と言い、重くてかたい生地でした。

当然、生地との格闘です。

重いアイロンで、体をアイロンに乗せて、力のいる仕事でした。

女性には、上着は縫えないと言われたのは、それほど「力」が、必要だったのです。


今は、生地もしなやかになり、軽くなりました。


上着を縫う、女性もいます。

でも、力(りき)のきいた仕事が、望ましいのは、昔も今も同じだと、私は思います。

人の「力」から、文明の「力」もありますので、使いようだと、思います。

「締めて、叩いて、殺したら、冷たい台に、寝かしなさい」
(芯据え前の、フロントを、イメージしていますが、解っていただけるお方は、いらっしゃいますか?)

生地が素直に、整うには、生地に素直な「仕事」が、必要なのです。

生地に「勉強」させらていれます。

つまり、叩かれ、締められ、吊るされているのは、私の方なのです。

生地とのお付き合いも、40年が過ぎていますが、よくも悪くも「生地は素直」です。

飽きません。

深い勉強が、楽しいです。

あと十年、頑張ります。