カーネーション ⑨

この生地は SUPER 230s です。

糸子さんもイブニングドレスの仮縫いを別の生地で合わせていました。
高級な生地で始めから合わせるのは、リスクが大きすぎるため、日本では
「代替」といって
別地で仮縫い着せつけをします。

1999年ミレニアムの年、英国フェアー催しに合わせ紳士服オーダーサロンでも、SUPER 210s(当時は一番細い番手でした)の生地で、英国のカッターが
着せ付ける企画がありました。(サビルローのカッターを呼び寄せたのです)
スーツの上代が280万円でした。

一着売れました。

当時のSUPER 210sの生地は、お客さんが「座って立つとき、ズボンを穿き忘れた」と表現するくらい、繊細で軽い生地でした。

オーダーサロンでも、代替の仮縫いで英国のカッターに着せつけを
依頼すると、「代替の生地では合わせられない」「生地が変われば着せつけも違ってくる」と、言ってきました。

どちらが良いのか、一言ではいえませんが「ものづくり」文化の違いです。

「ものづくり」文化は、西洋と日本のギャップが大きいです。

西洋は「ものづくり」の過程から、楽しみが始まります。
仕上がりが遅くなっても「良いもの」をつくるために、時間と手間をかけるのです。
テーラーと一緒につくった服の出来は、双方の責任です。



糸子さんがお客さんと友達のようにコミュニケーションが出来たとき
良い服になります。



(客) 「わぁぁ」 「このドレスええわぁ」 「これこのドレス貰うわ!」

(糸子)「でもそれ代替の生地やから、あかん!」

(客)「私がええ言うてんやから、ええやろ!」

(糸子)「最高のドレスつくってって言うたやんか」「ダンスホールで一番生えるドレスつくるねん!」

糸子さんの「ものづくり」の情熱が、踊り子さんの生き方にも影響するのではないか、明日が楽しみです。

280万円のスーツは、クリスマスの日に納品しました。