「良くて当たり前」が使命の仕事です。
何の変わりも無い、デザイン・・・
しかし、お客様は、スタイルを持っている。
永年、誂えているお客様は、袖を通すだけで判断する。
それだけに、承る者として一針にプライドを懸ける。
バックスタイルの肩廻りで、着心地は決まる。
そして、形となったとき、袖を通すお客様だけに、私が仕立てた着心地を味わっていただきます。
神経を使った、真剣勝負もここまでです。
ゆっくり一晩、ハンガーで寝かせて、お客様をお待ちいたします。
日本の仕立ては、「重い・硬い・やぼったい」って、言われます。
きっと、雨降り袖やバルカと言う胸箱ポケットに、若い消費者は魅力を感じるのでしょうね。
ピリに味があるとか、皺にセクシーを感じたり、受け取り方もいろいろあって、面白いなぁと、思いますが、私は、繊細な日本流の仕立てが好きです。
ただ、イタリアの「素材の味を殺さない」と言う、感性は、私流に応用させていただいています。
まず、接着芯は使いませんし、糊も極力控えます。そのために、バネ(張り)はありますが、素材の柔らかさは生きています。
バネでそれぞれのパーツが活きていますから、雨降り袖のようなピリも皺もありません。(セクシーでは無いのでしょうね)
立体の仕上がりは、ピリも皺もありません。
形や着心地から、味を感じて頂くのが、日本流の仕立てです。
私は、若いデザイナーに言った事があります。(関西の人ではありません)
「ピリや皺を表に出して、セクシーに気取っても、お客様は本気で仕事が出来ますか?」
お台場や本切羽の流行りも、まだまだ続きそうですが、私には、どうでもよいパーツです。
「ネックで支える、仕立て」が、私の一番重要とする仕事です。
今年最後の仕事となりましたが、オーダー仕事は、お客様のご満足をいただいて終了です。
「良くて当たり前」が使命の、仕事です。